読書雑感10 2004.1〜   トップページへ


◯鮎川哲也「黒いトランク」光文社文庫☆☆
 古典的名作だがアリバイトリックが主眼と言うことで長らく読まずに居た、読んでみてやっぱり「リラ荘事件」の方が圧倒的に面白かったなぁと再認識した。

◯二階堂黎人「地獄の奇術師」講談社☆☆☆
 横溝正史を熱心に読んでいた頃の気持ちになって読んだ。長編だが楽しく読めた。

◯アガサ・クリスティ「エルキュール・ポアロ」集英社文庫☆☆
 精選短編集、しかしポアロは余り好きじゃないので感情移入しにくい、「スズメバチの巣」が面白かった。

◯ジョン・ディクスン・カー「火刑法廷」ハヤカワ文庫☆☆☆
 古典名作、一つの殺人を掘り下げて展開するので物語としての進展性にかけるが落着いて読める、最後のどんでん返しを是とすると、消失もあやふやなものになってしまうのでしょうか、ここは物語としての膨らみを持たすためで、やはり解決は現実路線で有ったんだと思う。

◯歌野晶午「死体を買う男」光文社文庫☆☆
 
作中作というという試み、登場人物が実在の著名人、ユーモラスな中身とどんでん返し、気楽に読めたがなんだか物足りない。

◯有栖川有栖「月光ゲーム」創元推理文庫☆☆☆☆
 アリバイやちまちましたことを気にせず、閉ざされた空間での犯人捜しという一番好きな推理小説形式なのでとっても楽しく読めた。只犯人はダミーの方に引っかかってしまった。目立たないし、てっきり正解だと思っていたのになぁ。

◯H・G・ウェルズ「タイム・マシン」旺文社文庫☆☆☆
 名作古典SF短編集、貧富の格差への鋭い批評がテーマの表題作他、110年前から未来を標榜したもので現代に照らし合わせてみて面白い。

◯有栖川有栖「ロシア紅茶の謎」講談社文庫☆☆☆
 短編集。暗号、ダイイングメッセージ、密室いろんな要素が折りこまれていて楽しかった「屋根裏の散歩者」が一番面白かった。

◯下川裕治「12万円で世界を歩く」朝日文庫☆☆☆☆
 頁数が減るのが寂しく感じた本。世界各国を限られた予算で旅した記録。

◯金原ひとみ「蛇にピアス」集英社☆☆☆
 TVで見た著者に興味を惹かれて読んでみた。話題の芥川賞ベストセラー(普段ならまず手を出さない)、予期していたこととはいえ冒頭部分の肉体改造に嫌悪感を抱きながらも、2時間半であっという間に読み終えた異質青春小説。

◯コリン・デクスター「死者たちの礼拝」ハヤカワ文庫☆☆☆
 
翻訳物を読む上での難儀なところはカタカナ表記の人物の色分けで苦労する点、特に本書は似たような名前の人が登場するので最初の頃は読み難かった。結局、意外な人物が真犯人だったのだが、してみると検死はどうなって居たんだとか、細かな点が色々浮かび上がってくるがそんなのは意に返さなくて物語の流れを楽しむのがファンとしては心得るべきところ。

◯有栖川有栖「46番目の密室」講談社文庫☆☆
 
後書きにも有るように、密室物は古今の名作を問わず何時も余り読了感は良くないので殊更好きではないのだが、嫌われる関西弁で堂々と勝負している著者に愛着が沸いているし読んでみた。途中締め切りの関係で頁稼ぎしているなぁと思われる個所も有ったけど、一気に読めた。冒頭から犯人をマークして言動に注意して読み進む僕は(大抵目立たない意外な人物)今回も密室トリックは余り考えなかったが、慎重に読めば判ったかも知れないなぁと思えた。

◯村上春樹「国境の南、太陽の西」講談社文庫☆☆☆☆
 
彼女に勧められて読んでみたら、意外な拾い物だった。実名の雑誌も登場するし、多分作者の私小説なんでしょう。粗筋は他人も羨む現在の境遇と過去の思い出を手に入れている「僕」が、現世をより良いものにする為に帆走するといった内容だが、とても読みやすく、嫌味は感じない。人を心底愛するという行為の一端に触れた気がしました。只、この本にも有る、死という行為を物語りの深みを出す為に使っているのは安直な感じがしました。多分主人公の「僕」はどこまで行っても現世の己が欲を追求する為にそれを選択する事は無いでしょう。かなりええ格好しいの物語ですが、内省的な文にはとても惹かれたので今度他の著作も読んでみようと思います。

◯小西政継「マッターホルン北壁」山と渓谷社☆☆☆  図書館
 
無気力な時は、こういった本を読む事にしている、紛い物が多い世の中にあってこんな人生もあるんだなと少し眼が開かれる。

◯斉藤政喜「時速8キロ日本縦断の旅」小学館☆☆  図書館
 
勝手な読み手としては岡山県と佐賀県の時のようなハプニング以外は全編予定調和な感じがして今までの著者の多作品よりは余り感情移入できなかった。
◯村上春樹「遠い太鼓」講談社文庫☆☆
 ファンでもないのに読むのは少し冗長だった、とっておきのハプニングがイタリア車のエンジントラブルぐらいじゃね。

◯有栖川有栖「ブラジル蝶の謎」講談社文庫☆☆
 「ロシア紅茶の謎」に較べたら読み劣りした短編集だった、気楽に読めたけど解決を聞かされてもふ〜んって感じの物が多かった。

◯トマス・ハリス「ハンニバル」上・下新潮文庫☆☆☆
 「レッド・ドラゴン」「羊たちの沈黙」は壷にはまったが、なんとなく場違いなブラジルやイタリアが出て来たり、自ら作り上げた人物造詣に拘泥していて、映画で知ってはいたがやはり物足りなかった。とはいえ高尚趣味の薀蓄を除けば上下巻をたちまちに読めたので面白かったのは間違い無い。

◯トマス・ハリス「ブラック・サンデー」新潮文庫☆☆☆
 寡作作家、トマス・ハリスの文庫本をこれで全部読んだことになる、最後に読んだのはデビュー作で、他の作品と趣の異なるテロリストが暗躍する冒険小説、最後はあっけない。

◯野田知佑「北の川から」新潮文庫☆☆☆
 
硬派エッセイを久しぶりに読んでみる、ストレスが溜まっているので少しだけ気が晴れた。

◯ロアルド・ダール「あなたに似た人」ハヤカワ文庫☆☆
 
ブラックな味付の名作短編集ということだったが、書かれてから五十年経っており、オチを読んでもさしたる感心をもてなかった。

◯森村誠一「異常の太陽」中公文庫☆☆☆
 
短編集、久しぶりに読んでみた。どれも面白かったが「奔放の宴」「残酷な視界」が良かった。

◯法月綸太郎「頼子のために」講談社文庫☆☆☆
 
冒頭部分の手記は引きこまれたが、なんだか底が浅かった、通り魔の方は?冒険>誰彼>頼子>一の悲劇>雪密室>>>密閉教室

◯島田荘司「死者が飲む水」講談社文庫☆☆☆
 
著者初期の作品、列車の時刻表アリバイトリックが続く前半は速く読み終わろうと思っていたが、巻末が印象に残った。

◯有栖川有栖・篠田真由美・二階堂黎人・法月綸太郎「Yの悲劇」講談社文庫☆☆
 
競作短編集、法月氏の労作が出来栄えとしては(篠田さんのは読まず)一番かなと思うが、直ぐ読めたのは二階堂さんのものだった。 漫画感覚のこういった大胆な展開は意外と面白いなと思った.。