読書雑感12 2005.1〜   トップページへ


◯折原 一「倒錯のロンド」講談社文庫☆☆☆
 推理小説懸賞応募にまつわる作品、面白くてすらすら読めた。
◯島田 荘司「確率2/2の死」光文社文庫☆☆
 ダイハード3のような出だしから、意外な展開を見せる吉敷刑事作品、車がうろうろするトリック以外はだいたい予想できた。
◯堀江 謙一「太平洋一人ぼっち」舵社☆☆☆ 図書館
 ヨットによる太平洋無寄港横断の記録、現在も氏は世界一周航行中、日記形式。
◯ジョルジュ・シムノン「メグレ罠をはる」ハヤカワ文庫
 面白そうな帯にダマされた、と言うのが正直なところ。代表作がこれではこの人の小説はもう読むまい。
◯ジョン・ラッツ「同居人求む」ハヤカワ文庫☆☆☆
 同居人募集の三行広告に応じてきた女は徐々に得体の知れない行動をとり始める、巻末の「おまえは誰なんだ?」の台詞が深く心に残る作品
◯有栖川有栖「赤い鳥は館に帰る」講談社☆☆ 図書館
 大阪在住の推理小説作家の寄せ集めエッセイ集
◯野田 知祐「川を下って都会の中へ」小学館☆☆☆
 気分が冴えない時は推理小説などより、困難なドキュメントや旅のエッセイ等がすんなり読める。もう今更カヌーで川下りをしようとは思わないが、数年前までたまにゴムボートで日本海沿岸の釣りをしていた僕は日本の川や海は自由に手軽に気兼ね無く楽しむという見地からは遠いように思う。
◯スティーブン・キャラハン「大西洋漂流76日間」ハヤカワ書房☆☆☆☆ 図書館
 読んでいてやっぱりドキュメンタリーに勝るものは無いなと思った。非常用ゴムボートで漂流する記録だが、過去に読んだものに較べて物資に恵まれている所が悲壮感を薄くしているのが読みものとしても良かった。
◯下川 裕治「世界一周ビンボー大旅行」 文庫☆☆☆ 図書館
 貧乏見聞記続編、今回はNHKスタッフ同行で趣は違うが、それなりに面白い、特にシベリア鉄道のモンゴル娘とのコンパーメントでの出来事など。◯ウィリアム・アイリッシュ短編集3「裏窓」創元推理文庫☆☆☆☆
 短編集だが、9編あるそれぞれが抜群に面白い、こういったのも珍しいのでは?「ただならぬ部屋」など読書の喜びをこれだけ喚起させてくれる短編があるだろうかという作り。
◯ウィリアム・アイリッシュ「黒いカーテン」創元推理文庫☆☆☆
 二十年ぶりぐらいの再読、ウイリアム・アイリッシュの作品は読みやすくて翻訳推理小説に有りがちなカクカクしているところが無いのでお勧めです。
◯ウィリアム・アイリッシュ「暗闇へのワルツ」ハヤカワ文庫☆☆☆
 長編だが面白くて一気に読めた、探偵がもう少し活躍し薄倖の文通相手がクローズアップされる展開だったら重厚な内容になったと思う。
◯有栖川有栖「スウェーデン館の謎」講談社文庫☆☆
 雪の足跡がメイントリックの密室物、なんだか軽い。
◯綾辻 行人「綾辻行人ミステリ作家徹底解剖」角川書店☆☆ 図書館
 十角館から始まる著者全作の所感、交流の有る人達の寄文、カバーの変遷が面白かった。
◯有栖川有栖「迷宮逍遥」角川書店☆☆ 図書館
 著者の場合、本編よりエッセイの方が面白いと思う。
◯江戸川乱歩「日本探偵小説全集2 江戸川乱歩集」創元推理文庫☆☆☆☆ 図書館
 中・短編集 殆どが再読になるが屋根裏の散歩者と人間椅子はやはり面白かった。目羅博士、堀越捜査一課長殿は初めて読んだが面白かった。◯惠谷 治「アフガン山岳戦従軍記」小学館文庫☆☆ 図書館
 アフガニスタンへのソ連侵入時のゲリラとの従軍記をベースに国の成り立ち等が網羅されている。
◯島田 荘司「暗闇坂の人食いの木」講談社文庫☆☆
 御手洗物ということで期待して読んだが収束がやや強引なような気がした。
◯下川 裕治 編「アジア辺境紀行」徳間文庫☆☆☆ 図書館
 複数の著者による海外旅日記だが最初の浜なつ子さんの章が秀逸
◯蔵前 仁一「旅人達のピーコート」講談社文庫☆☆☆ 図書館
 旅行記は数有れど良い本というのは書き手がしっかりした知見を持っている人のがやはり良い。面白かった。
◯綾辻 行人「どんどん橋、落ちた」講談社☆☆☆☆ 図書館
 時計館、十角館を嚆矢とする館シリーズと霧越邸以外はどうもしっくり来なかったが(囁きシリーズ等の一部は読んでいませんが)これは大お勧め、読んでいて楽しかった。犯人あての短編集。
◯蔵前 仁一「いつも旅のことばかり考えていた」幻冬舎文庫☆☆☆ 図書館
 旅行の茶話集 おまけの漫画が面白い。
◯つげ 義春「新版 貧困旅行記」新潮文庫☆☆☆ 図書館
 昭和40、50年代の旅行記、漫画家としてのほうが著名な作者だが、文章も味わいがあった。
◯アガサ・クリスティー「そして誰もいなくなった」文庫☆☆☆☆
 
名作の再読、久しぶりに読んでみて犯人を違う人物と混同していた事に気が付いた、大枠は外していなかったのだがアクロイドの影響か。
◯アガサ・クリスティー「ABC殺人事件」早川書房☆☆☆ 図書館
 
上の作品より更に年月を重ねた再読、といっても子供向けの物だったからか内容は全く覚えていなかった。テーマはミッシングリングの好きなものだったので楽しく読めた。犯人は鮮やかだったが、同じテーマの我孫子武丸の現代作品に較べたら読み心地で随分劣る。
◯島田 荘司「御手洗潔のメロディ」講談社☆☆
図書館
 短編集、「さらば遠い輝き」の有る部分と「SIVAD SELIM」が面白かった。残りの二つは結末を読まされるといった感じ。
◯櫻井 進眞「未踏の大洞窟へ」海鳥社☆☆☆☆☆ 図書館
 秋芳洞探検物語、自然を易々と壊す行政との闘いにも感心したが、阪神大震災を期に大切な人を失い、失意に陥りながらも回復して行く姿に読んでいて大いに元気つけられた。
◯前田 健一「アジアの路上で溜息ひとつ」講談社文庫☆☆☆
 食を通して現地人との記述が沢山出てくるので深みが有って面白い。
○東 直己「札幌刑務所4泊5日」光文社文庫☆☆
 刑務所に入りたいがために交通違反反則金を踏み倒しつづけ入檻した作家の話。
◯下川 裕治 「アジアの誘惑」講談社文庫☆☆ 
 一昔前のタイを中心に東南アジアの旅のあれこれ。
◯游人舎・編 「アジアの地獄」小学館文庫☆☆ 
 バックパッカーの現地で体験したトラブル集、タイトルほど酷い話しが多くはなかったが、最後の編だけは迫力が有った。
◯ウィリアム・アイリッシュ短編集1「晩餐後の物語」創元推理文庫☆☆☆ 
 少し前に読んだ短編集3の方が面白かった。表題作他前半は面白かったが後半はつまらない。外国人の表現する日本は映画にしろ小説にしろつまらないものになる。
◯ロス・マクドナルド「ウィチャリー家の女」ハヤカワ文庫☆☆☆ 
 レイモンド・チャンドラーの名作を余り面白く思わなかった傾向が有り、ハードボイルドミステリーは好んで読まないがロスマクの名作なので読んでみた。文体は素晴らしいが、謎がやっぱり薄い。
◯池水 清愁「気ままにゆったり丹波200山」文芸社☆☆☆☆ 図書館
 タイトルでは判らないが、長躯を駆け登山口まで行き、誰もいかない藪山を藪こぎして登ったりしているのに感心。今度家の前の槙ヶ峰登ってみますわ。
◯C・ハイド「大洞窟」文春文庫☆☆ 
 日本人登場人物がおざなりにかかれていなくて感心した。しかし途中2箇所ほど話しが飛んでいる所があったんですけど。
◯神畑 重三 「熱帯魚の秘境を行く」上・下巻 新日本教育図書☆☆☆☆☆ 図書館
 数ある紀行文の中でも最も面白かった、写真もふんだんに使われている。
◯沢木 耕太郎 「チェーン・スモーキング」新潮文庫☆☆ 
 著者初読、タクシードライバーの編で親孝行についてのことわざで似たような経験をしていた。結構共感できる事が多かったので又読もう。
◯沢木 耕太郎 「深夜特急1」新潮文庫☆☆☆☆  図書館
 アジアを旅する紀行文、面白かった。
◯ジュール・ヴェルヌ「地底旅行」東京創元社☆☆☆
 140年前に書かれた古典名作。地底湖が現れるまでは楽しんで読めた。
◯ロス・マクドナルド「さむけ」ハヤカワ文庫☆☆☆ 
 著者の代表傑作ということで前から気になっていた。話がとんとん拍子に進んで、人物が混同したまま感情移入も出来ずに読み終わってしまった。◯野崎 正幸「駈け出しネット古書店日記」晶文社☆☆☆☆ 図書館
 同じようなことをしようかと思い立ち、図書館で参考程度に借りたら、意外に面白かった。左傾思想はさておいても評言の確かさに感心し、パソコンのトラブルや不払いの人への対処方法に共感を抱きながらあっという間に読み終えた。
◯関川 夏央「戦中派天才老人・山田風太郎」マガジンハウス☆☆ 図書館
 最近、魔界転生を再読し、ついでに図書館で何の気なしに借りてみた。漫才のような口述筆記が面白かった。
◯岡崎 大五「添乗員騒動記」角川文庫☆☆☆ 
 パックツアー添乗員も思っているほど楽な仕事じゃないというのが判った。中でも「十五日間の地獄〜南米」編など大変面白かった。
◯折原 一「倒錯のオブジェ」文藝春秋☆☆☆図書館
 京極夏彦・芦辺拓の名作と平行して読んだのだが、こちらの方が読みやすかった。前者のほうが薀蓄が多く所謂中味が濃い内容だったが、読み辛く、結果、この本のほうが楽しませてくれた。あぁ本が書きたいなぁ
◯山口 雅也「チャット隠れ鬼」光文社☆☆☆図書館
 著者初読、ネット上の匿名性を主眼にした新しいタイプの推理小説。時折はさまれるログが良いアクセントになっており面白かった。
◯宮部みゆき 「R.P.G」集英社文庫☆☆図書館
 著者初読は遅ればせながら「模倣犯」上巻。名前が売れすぎて敬遠していた宮部みゆきの最初に読んだ「模倣犯」が好きな内容の作品だったのだが下巻が図書館になかなか戻ってこないのでこちらを読んでみた。擬似家族を扱った小説として何かで読んだ記憶があり手にとって見たが、実際はネット上の擬似家族の薄い内容だった。
◯山口 雅也「13人目の探偵士」講談社☆☆図書館
 著者2読、八十年代に流行ったゲームブックのような分岐点を備えたパラレル小説。
◯沢木 耕太郎 「深夜特急 第二便ペルシャの風」新潮文庫☆☆☆☆☆  図書館
 中東を旅する紀行文、面白かった。どうやらこの「深夜特急」は今まで読んだ旅物で一番優れているのかもしれない。
◯宮部みゆき 「火車」双葉社☆☆☆図書館
 戸籍を奪い他人に成りすますという内容。社会派の力作。