つれづれ文  戻る
一遍丸ごと書く力量が備わってないので尻切れトンボです
  自分でも運動神経ならぬ文章神経が劣っていると痛感しています。 言葉を弄しているというか、中味のわりに伝わってくるものがない
物だと思いますが、文を載せてやろうと、思われる方の一助になれば幸いです。


最終手5七銀を着手したときの心情は「この勝負貰った」と思っていたに違いない、あにはからんや実際は其れほどの形勢は開いてなかったのにである。
君は一体こんな文章を面白いと思えるのか?世の中は君が思っているほど高尚でもなければ酔狂でもない、個人的な苦悩を羅列した私小説などにお金を払う読者がいるかね、内としては売れる小説が第一なんであってこんなのは同人誌やなんかでひねくれた人々同士で切磋琢磨して悦に入れれば良いじゃないか。
あー又此処もだ同じ事を言う、突っ返された原稿用紙を紙袋に納めながら羽谷は豪奢なビルを後にした、初夏のさわやかな陽気が都会の中に居ながらにして心地よい気分にさせてくれるはずだが、一人ベンチで腰掛ける彼には無感動な事象でしかなかった。「煙草喫いたいな」独りごちてみたものの
煙草はもう無かった、財布の中には銅色の硬貨が少し、もう帰りの電車賃さえなかった、もっとも帰る家もなかったが。
ベンチに半身をずらして腰掛け、無感動な目で前方を見据え、通い慣れた思考の迷路に彷徨い出す、どこかで拡声器の声がし遠ざかっていく、空はどこまでも澄んで青いのに、空っぽだった。
そして馴れることの出来ないあの恐ろしい胸騒ぎがして、何時しか気を失っていた。
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詰め将棋の小冊子をみる、図面を頭に記憶する。

 ほらみてみろよ、何とかなるさなんて気休めは止してくれ、そんなのはあてになりゃしないのさ、語感が良いからTV世代の輩が好んで使いたがる言葉さ。
 自分の行動無くして、何もなりゃしないし、行動を起こすには気力の充実が必要なのさ、この当り前のことすら気づかずやおら時間の浪費を重ねているのが現状さ。いやとっくに気づいていた、でも断を下しにくい事ってあるじゃないか、特に理想主義者にとっては、法外の幸運が訪れたり身清くして徳を積み重ねていればその内報われるなんて、はっきり言えば甘い考え、報われるなんて発想自体が貧困な発想なんだよ。
 あ−そうだよこの現実に直面して僕はなすすべ無く打拉がれていると、そう思ってくれて間違いない、なにかやらなきゃ なにかやらなきゃ 自答するばっかりだったよ、状況が答えを求めてきたよ、有り体に言えば時間は待っちゃくれないよ。
 俺は頑固なんだ、そんなのがなんだって言うんだ、やっぱりこれが用意されていた唯一無二の俺のレールなんだ。車窓から見える景色はツンドラの原野だろうが、行き先がシベリヤの針葉樹林だろうが燃料がつきるまではすすみ続けるのだ。

 良い路線だろうが悪い路線だろうが目的地なんか有りはしないのだ。
   
 おお!なんと云うことだ! ふぁ〜・・・
時間が時間が時間が過ぎてゆく。

 僕は文筆神経が劣るのだろうか、頭の中のこれまで思い描いた事柄の少しでも書き記せているのだろうか?いやいない!

 シュルンとボールが舞い上がった、それを観ていた水兵は思わず片手を自らの頭に、もう一方の手をホ;ツペタにあてて驚愕の面持ちで事態の成りゆきを見つめた。
 「そんなんじゃ駄目だよ!」茨城訛りの親父が将棋盤の縁を駒でペテペタタ叩きながら、強烈な駒音を立てながら次の指し手を盤上に示した。
 羽谷はこのくそ野郎と心の中で思ったが、彼我の棋力の差は歴然としていた。「有りません・・・負けました。」そう呟くように投了の意志を告げ駒台の駒を盤上に撒こうとしたとき相手の腕がむんずとのびてそれを許さないかのように
腕を掴んだ。
 「もうだめだ、橋の向こうもロシア野郎でギッシリだぜ」
ドイツ第21歩兵連隊曹長のジール・ザクトハウゼンはもはや自分の運命がこれまでという現実を受け入れざるを得ない状況に陥り初めて落ち着きを取り戻した。 そして胸の真鍮製の十字架を握りしめると深く静かに瞑想をした。
真っ暗な中に故郷のエッセンの古い町並みが現われる、農場で飼っていたアヒルがブドウ畑がそして厳格な父と粗忽者だが陽気で明るい母が畑の真ん中からこちらに視線を投げかけている。父の麦わら帽子が何かの拍子にずり落ちる、丁度今日のような暑い日、太陽の下、非常な現実だけが違っている。

 「キュン!」直ぐ傍を聞き慣れた跳弾の音がし、彼は目を見開いた。
 
開戦当初のドイツ軍の疾風の侵略が時間重視の領土拡大戦なら、終戦間際のロシア軍は大義名分の報復と殺戮の復讐戦だった。島国の日本で唯一上陸戦が行われた沖縄。此処は陸続きしかも相手はロシア、彼等が通った後はなにも残らない

 ココナツを沢庵の代わりに漬けました。落語は面白いね〜、東京の文芸調と
大阪のTV贋落語家以外のモノを一つ頼むよ!
 エー私の処も一席お付き合いを願いますが、最近、というかこのところずっと云われてるのが世の中便利になったという風潮ですな、あれってホントにそうなんでしょうかね。

 千駄ヶ谷学園を舞台にしたこの事件から早一週間が過ぎようとしていた、しかし全くのところ捜査は空転を繰り返し事態は遅々として進まなかった。
 中等部3年 高橋紳哉が 白昼の教室内で謎の変死を遂げてから様々な人々が事情聴取を受けた、担任は勿論のことクラス生徒40人全員、クラブ関係、同学年・・・等々 
 
 羽谷刑事が生徒一人一人の調書を読み返していた日曜夜、千駄ヶ谷学園校区内 榧市内に有る新興住宅の一角、千駄ヶ谷学園中等部3年α組のとある生徒の自宅自室内で熱心にパソコンで文を綴っている姿があった。
 明るくない蛍光灯の下にぼんやり浮かんだその姿は、画面からの照り返しで青白く、一見抑揚のない表情の中に眼だけが強い光を放っていた。
 「カタカタカタ、トン、カタカタカタ、トン」 
キーボードの乾いた音だけが小刻みな間を置いて響き、点滅するカーソルが移動した後には文字の羅列が出来上がっていく。
 時折カーソルが同位置で点滅を繰り返したりもするが、そんなときは開け放した窓から身を乗り出して当所のない視線を夜空に向けたりした。
 此処からは千駄ヶ谷学園が視界に捉えることが出来るが、努めて見ないようにした。
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 階下から家人が夕食の出来を知らせている 鍵のかかった一番上の引出しをあけ一番下に挟み込んだプラスティクケースの中から真っ赤なフロッピイを取り出すと、今作ったデータを移してから鍵をかけパソコンのスイッチを切ると徐に部屋から出ていった。
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 「しかしこうして観ると、全ての生徒が疑わしくもありますな。」
先程から煙草が吸えないからか落ち着かない様子の内藤警部が調書を繰りながら誰に問いかけるでもなく独りごちた。
 自他共に認める無類の寒がりの羽谷はこの近代的な教室とは不釣り合いに映る四半世紀前の学校仕様の大型石油ストーブに背中を焼きながら、入口の巡査に「次の生徒を」と即した。

 部屋のドアがノックされ、13番目の生徒が羽谷刑事の前に着座した、
「名前は 矢北 聖人 住所は榧市三笠町 ・・・」内藤刑事が本人の前で一通りプロフィールを述べての確認作業が行われている間、羽谷はさりげなく生徒の挙動を注視している。
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面白いこれは犯人が我々を試しているんだな、よし謎を解いてやろうじゃないか、羽谷は暗号の書かれたノウトの切れ端を受け取ると両手の平で皺を撫で机の上に均して見せ暫くその数字の羅列を俯瞰していたが、こうなると回りが一切見えなくなってしまう質なので、内藤警部は仕方なく直属の部下数人と田中寅男が殺されていた便所周辺を再調査することにし、教室をでていった。
 さて此処で田中寅男のポケットから見つかったこの紙切れがどのような物であったか読者の皆さんにもお見せしよう、暗号文と云うからにはこの中身が解ければある意味を成した文章が浮かび上がるのだが、それを解くには紙に書かれているモノだけではなく、この紙切れ自体も関係してくるのでその全容を克明に示さなければならないのだ。 
  

2六 7八 8四 1九 4五 2六 7六 7三
     1一 4二 3六・・・・


紙はルーズリーフ用紙を引き千切った物を四つ折りにして有り上半分に数字と漢数字の羅列、右下に 机が床の上に置かれた図が描かれている。

 何だろうこれは?、恐らくカッターナイフか何かでしたモノだろうが、並行に3筋2〜3pの長さで左上隅から中央部にかけて紙の左上が明らかに作為的に切られている、暫く見つめていたが、近くにいた捜査員に写真を撮って貰ってから鑑識に回すことにした。

 「時々思うんですが今回の事件は突発的なモノじゃなく、周到に計画されていたモノ何じゃないかと最近頓に感じますね、この慌ただしい年末の時期に捜査が入るということも」
 「しかし逆に言えば冬休みに入ろうとする時期に事件を起こすという事はだよ、我々に学校内での捜査をし易くしているとは考えられないかね。」
 「しかし実際問題、冬休みに入った生徒や学校関係者を長期に事情聴取の為に留めて置くわけにも行かないという点も犯人の脳髄に描かれていたんじゃないかとおもうんですが。」
 「まあ、どっちにしろ今年も後一時間を切ってしまったわけだし、こうして
未解決の事件を胸の中に抱えながらあんたとこのむさ苦しい本部の中で過ごすのも一度や二度の事じゃないんだから」
 内藤警部は空になったコップを持って立ち上がると給湯室にと出ていった。
羽谷は灰皿の中で消えずに燻っている内藤警部の吸い殻に自分のお茶をかけて消し、棚の上に置かれた年代物のTVから流れ出る年末恒例の番組に苦々しい視線を投げつけてから、夜勤の警官二人が指している将棋などをぼんやり観ていた。 2人は先程から余り喋らず黙々と指し続けているが、力の差があるらしく一方の方が駒を落として指している、そしてもう一方の方は1手指す度になにやら作業をしている。
 「何をしているんだい?」
 「棋譜をつけてるんですよ。」
 「棋譜ってなんだい?」
 若い方から人通の説明を受けた羽谷は傍らのノートを見せて貰った。
 
 内藤警部は棚の中から紅茶のティーバックを取り出すとコップに並々とお湯を注ぎながら家族の顔を思い浮かべていた、「去年もこんな感じだったかな」
窓の外に深々と降り積もる大粒の雪を目で追いながら独り語ちた。
 暫く物思いに耽っていたろうか、視線を感じたので振り返ってみるといつもの見慣れた羽谷刑事が笑みを浮かべて立っていた。
 
 終わり