読書雑感14 2008.1〜   トップページへ


◯小川原 正道「西南戦争」中公新書☆☆☆☆ 図書館
 鹿児島に住んでいた四年間に城山石垣の銃痕を見たり、この四年間、宮崎の道を何度も往復しているくせに、西郷隆盛や西南戦争の詳述を知らなかったので読んでみた。130年前のこの戦争でも又、大義より資源に勝るものが順当勝ちしている。持てざる者に巧妙に仕向けられ、暴発し、緒戦は勝つも物量に押され死に至る。戦争のアウトラインは一部の例外を除き概ねこんなものだ。只、日本での内戦ということも有ろうが、戦後の卑怯な敗者に対するプロパガンダも極力抑えられているように見えるところが救いか。今度、西郷さんを偲びながら延岡北部の可愛岳に登って見ようと思います。

◯五代 夏夫「薩摩秘話」南方新社
☆☆☆ 図書館
 東方からやられるばかりの日本史に於いて、西の雄藩として歴史に確固たる足跡をしるした「薩摩」、その地に焦点を当てた風土記。明治維新の人物から地方の昔話のようなものまでコラム形式にまとめてあるので読みやすい。

◯二木 謙一
(監修)「城が見た合戦史」青春出版社☆☆☆ 図書館
 戦国時代、戦いに城がどういう役割を果たしたか有名合戦から概略を知る本。殆どが篭城戦になっているが、まぁ、城まで詰められるわけだから大抵負けている。そんななか、信州上田の真田氏の戦いぶり等印象に残った。

◯ミヒャエル・ホルツァハ「ドイツ・遥かな僕の道」三修社
☆☆☆ 図書館
 青年文筆家が収容所犬を共に冷戦時代の南北ドイツを無一文で放浪するさまを書いたもの。ダッハウで二度目の自虐史観に触れるまでは面白く読めた。

◯クレイグ・マクラクラン「西国三十三か所ガイジン巡礼珍道中」小学館文庫
☆☆☆☆ 
 ニュージーランド人が委細気にせずずけずけと寺の悪口を書いているのが面白い。随所にステレオ(ステロ?)タイプの俗っぽい日本人が登場するのは相変らず引っかかるところだが、外国人の目線の方が核心をついているなと思わせるところも多々有り。日本通などどいわれ周囲からちやほやされお茶や歌舞伎から入ったりする半可通より、よほど好感が持てる。

◯高野 潤「アマゾン源流生活」平凡社
☆☆☆ 図書館
 蛇、マラリアの他、人間の体内に寄生虫を仕込んでくる蛾など「アマゾン」らしくて面白かった。

◯マルコ・ポーロ「(完訳)東方見聞録」1・2平凡社
☆☆☆ 図書館
 約700年前の古典名作、イタリアの商人の息子が当時ユーラシア大陸を制覇していたモンゴルのフビライ・カーンの比護の下、支配下地域の概略からフビライ本人の周辺等を後年捕虜になった牢屋の中で口述筆記した本。1では前半の中東から中央アジア、中国に至る旅程などが旅愁を惹き立てられた。2では中だるみで殆どを速読したのだが唯一「ジパング」の記述は先日博多の博物館で元寇についての展示物を見ていた兼ね合いもあり大変興味深く読めた。

◯西谷 尚「祈りたかった」健友館
☆☆☆☆☆ 図書館
 四国霊場八十八か所お遍路日記、前から興味が(主に旅として)あったお遍路について何気なく図書館で手にとったが当たりだった、人に薦めたくなる良書。

◯平野 洋「伝説となった国・東ドイツ」現代書館
☆☆☆ 図書館
 戦争、敗戦の途端の苦しみをどこより味わった国ドイツ。ソビエト連邦にされたことは敗戦直後もさることながら国を分断接収されたことによる何十年の長期の制裁の方が人の心の有り様を変えてしまい実に罪作りな出来事だと、地続きでこんな国に侵略されなくて単純に「助かったな」と思う。