読書雑感2002U お勧めの本メニューへ  トップページへ

石川真介「若狭小浜殺人紀行」潟Rスミックインターナショナル☆☆☆
 著者得意の中部日本旅情ミステリー、綿密な取材の元、景勝地や名産、地元の史跡、著名人が物語りに織り込まれているので旅気分が味わえる。犯人をあてるのはちょっと難しいが、処理方法が口封じと共に斬新だった。

武田文男「山で死なないために」朝日文庫☆☆☆☆
 アイキャッチに凝る本はろくな物が無いと思いませんか?この本は大仰なタイトルが付いているが、とても面白い本だった。山にたいする造詣がとても深いのが文章から読み取れる。遭難、自然破壊への警鐘等

島田荘司「斜め屋敷の犯罪」講談社文庫☆☆☆
 舞台は北海道の最北端、曰くありげな洋館、密室で起きる連続殺人、これ以上無い素材だが、2/3過ぎてからホームズを連想させる探偵が登場してからはより物語が生き生きして面白くなった。後半に犯人当ての挑戦状も織り込まれている、犯人は平凡で僕も当ったがトリックまでは・・・

島田荘司「寝台特急「はやぶさ」1/60秒の壁」光文社文庫☆☆
 西村京太郎は2、3読んで読まなくなった僕には似たようなタイトルでもこちらは好み。ただ、顔の見えない位置に覗かせる様にしていたという所に拘ってしまったので双子探しの旅は無意味な物に感じて速読してしまったので中間部は印象薄い。

島田荘司「北の夕鶴2/3の殺人」光文社文庫☆☆☆
 トリックでいえば心理的な「はやぶさ」の方が好きだが、こちらの方は物語性が高いので楽しく読めた。ハードボイル物は海外の名作でもなかなか感情移入できなかったが、主人公の妻が何故悪党に篭絡されたかも重要な命題になっており興味津々。 最初、黒幕は元同僚の刑事だと思っていました。

斉藤政喜「シェルパ斉藤の行きあたりばっ旅3」小学館文庫☆☆☆☆
 お気に入りシリーズ第三弾、今回はリヤカー、電気自転車、漁船等新しい旅行手段が出てくる、どれも真摯な著者の人柄が反映された旅で共感でき面白かったのだが、ビンゴゲームで出た玉で四国八十八箇所をめぐる旅など違った味わいが有り楽しめた。

大場満郎「南極大陸単独横断行」講談社☆☆
 パラセールと徒歩で南極大陸を1998〜1999年に横断した記録。信ずれば道開くと云う感じで巨額の冒険資金を捻出しているのが素晴らしいと思う、只、携帯電話を持つ事により現実問題も抱え込んでしまわなければならず冒険も色褪せて見える。

斉藤政喜「シェルパ斉藤の行きあたりばっ旅4」小学館文庫☆☆☆☆
 今回はカヌーも登場する「ばっ旅」だがカヌーよりも揚子江ゴムボート下りの方が面白かった。個人的にはサハリンの旅で起きた夜中のテントに来訪する自称「土地所有者」の箇所が同じような経験をした者にとって対処方法など重なっていた。しかし全編通して一番心に残ったのは戸を巡るスゴロクの旅ではなく「四国野根山街道を行く」、一番弱い小編が最後の出来事で珠玉の名編になった。

斉藤政喜「シェルパ斉藤の行きあたりばっ旅5」小学館文庫☆☆☆
 最高の読書の喜びを与えてくれたこのシリーズもこれで一応の完結を見るらしい、理不尽な対応に挫けず交渉する「どんぐり預金旅」、綺麗な白人女性に声が掛けられず葛藤している様の「パタゴニアトレッキング」を興味深く読んだ。

コナン・ドイル「恐怖の谷」新潮文庫☆☆☆
 約20余年ぶりの再読、内容は殆ど覚えていなかったが二部構成の後半が矢張り面白かった。

島田荘司「漱石と倫敦ミイラ殺人事件」集英社文庫☆☆
 夏目漱石がイギリスに留学滞在していた史実を元に漱石とコナン・ドイルの文体を真似て章毎に織り成したパロディの趣がある推理小説、漱石編の誇大表現は中だるみしたが後半は面白く鮮やかだった。

島田荘司「御手洗潔の挨拶」講談社文庫☆☆☆
 御手洗潔という探偵が登場する短編集、道具立ての理解に時間を要する大仰なトリックよりも「紫電改研究保存会」のような作品の方が読後感が良い、しかしこの本で一番印象深いのが掉尾を飾る著者の日本人一般に見られる傾向の所感、僕が漠然と感じていても現すことが出来ない案件も全て了解しておられる様だ。

斉藤政喜「東海自然歩道全踏破」小学館文庫☆☆☆
 関東から関西を結ぶ自然歩道1343kmを尺取虫方式で歩き継いだ記録、「ばっ旅」の文庫から入った僕には内容はむしろ平易に感じた。最初はブックオフから入ったが好きな作家になった、後3冊も揃えるつもり。

島田荘司「占星術殺人事件」光文社文庫☆☆☆☆☆
 動機や犯人が概ね当ったからか、騙された感じがしなくて読後感が凄く良かった。 著者のデビュー作にして最高傑作と誉れ高い本書を読む迄に「漱石と倫敦ミイラ」を読んでいたのもより面白く感じる偶然だった。
 物語の構成も過去の手記と事実それに対する考察という、新事実の少ない落ち着ける内容で読んでいて右往左往させらず謎に没頭出来るという理想的な「推理小説」だった、大お勧めの一冊。

島田荘司「御手洗潔のダンス」講談社文庫☆☆
 短編集、一番短い「ある騎士の物語」が一番面白かった他の二編は大仰に映った。

法月綸太郎「法月綸太郎の冒険」講談社ノベルズ☆☆☆
 初めて読む人の推理短編集だが拾い物で、全編面白く、滞る事無く直ぐ読了した。 どれも面白かったが「死刑囚のパズル」「切り裂き魔」「土曜日の本」が良かった。  

今井通子「続・私の北壁」朝日新聞社☆☆☆
 昭和44、46年にアルプスの北壁、アイガーとグランドジョラスを登攀した記録。
アイガー登攀に大半が占められているが、読み物としてはグランドジョラスの方が面白かった。

 
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