HD詩集4    トップページヘ ※詩の無断転載はおことわりします。


変身
                             
 美容室の帰りって
 なんであんなに体が軽いんだろう        
 まるで ふわふわと風に舞う 羽根のよう
 今のまま 魔法のかかった自分のままで
 街へ行きたくなる
 変わった自分を一番にみせたいのはやっぱりあの人で
 昨日のけんかも すぐに忘れてしまった
 髪をやさしく撫でてくれる人は 近くにはいない 


 足元にあるしあわせ

 犬の目線にあわせるようにして
 しゃがみこんでみつけた土筆たち
 身近すぎて見過ごしていた いくつもの春
 しあわせだって似たようなものかもしれない
 それは今も 足元に転がっているはず
 私が気付いていないだけで

 


 変わりゆくもの

 祖父と過ごす 農作業の休憩中
 以前は田圃だったその場所の畔に座って
 風にゆられていた
 ここに植えなくなって何年たつかねえ
 言葉すくなな 祖父のひとり言
 私は思わず目をつむった
 目をあけて聞くのがあまりにさみしかったから
 そして 時の流れを思っていた
 祖父が生きてきた時間を


 裏付け

 今年もあざみの花が咲いていた
 棘のある葉とは裏腹に
 茎いっぱいを覆う産毛は 柔らかく瑞々しい
 思えばあざみの花ほど
 私の詩に登場する花もないかもしれない
 書けば書くほど 掴み所がなく思うけれど
 私がこの花を好きないちばんの理由は
 母が好きな花だから かもしれない


 恒例行事
 
 今年も茶摘の時季がやってきて
 そして過ぎていった
 慌しい二日間で一年分のお茶を摘む
 鋏を手に孤軍奮闘する私と
 古い葉を選り分ける作業をする祖父母
 いつまで続けられるか
 或いは今年が最後かもしれないけれど
 笑い声の響くこの光景を
                        忘れずに記憶していたいと思う