〜友情寄稿〜            中島みゆきと癒し   トップへ                 

    第1回「瞬きもせず」 第2回「風にならないか」第3回「泣かないでアマテラス」 第4回 「Maybe」

 中島みゆきの歌における癒しについて、書いていこうと思う。幾度となく私を励ましてくれた。苦しみにじっと耐えるだけの、物言わぬ者たちへの共感に満ちているように感じられることもある。この連載を通して、彼女の歌の不思議な力強さと優しさをひもといていきたいと思う。

                        君を映す鏡の中 君を誉める歌はなくても
                    僕は誉める 君の知らぬ君についていくつでも
                             (瞬きもせず)

 初めて聴いたとき、これは、自己受容(※注1)のためのワークショップ(※注2)そのものじゃないかと思った。やり方は至極簡単だ。ペアまたはグループで相手を褒めあう。なんでもいい、とにかく褒める。褒められた人は素直にありがとうを言う。
自分に自信がない人は誉められるのが苦手だ。というか、誉められた経験がほとんどないので、受け入れられない。たまに誉められると、まるで自分が悪いことをしたかのように萎縮してしまって、そんなことないよと一生懸命打ち消そうとする。
でも、誉められるのは気持ちいいよ。だから、お互いに誉めあってにっこりありがとうを言う練習をするのだ。そうすると、他者から受け入れられ認められる心地よさを知る。おどおどしていた自分だけど、思いもよらなかったいい面を誉められると、自分に自信が持ててくる。
中島みゆきがこんなワークを知っていてこの歌詞を書いたとは思えない。 じゃあ、どうしてこういう他者受容に行き着いたのだろう?
 これは永遠の謎になりそうだか、彼女が心に傷があり、自分に自信が持てなくておびえて暮らしている人たちに共感していることは確かだ。同じ歌の中に

                       触れようとされるだけで 痛む人は火傷(やけど)してるから
                       通り過ぎる街の中で そんな人を見かけないか

 とある。そうだ、たくさんいる、心に火傷してる人は。と思わず相づちを打ってしまう。私もその一人だった。そして続く

                       あのささやかな人生を 良くは言わぬ人もあるだろう
                    あのささやかな人生を 無駄となじる人もあるだろう
                    でも 僕は誉める 君の知らぬ君についていくつでも
                    瞬き一つの間の一生 僕たちはみんな一瞬の星

 でも、僕は君を認める、君を誉める。君の人生には価値がある。というのが彼女からのメッセージだ。「ありがとう。みゆきさん。」と思わず言いたくなってしまう。人生の価値なんて、何を持ってはかれるというのか。人は独りで生きるわけではないし、万人のために生きるわけでもない。あなたが他の人に対してはどうであれ、私にとって意味のある人なら、あなたの人生には価値がある。今、私と共に生きているあなたは私にとってとても尊い。

 「瞬き一つの間の一生」と言うには人生は長すぎる感がする。しかし悠久の歴史を慮ればしかりである。一瞬の輝き方にはいろいろあっていいと思うが、私は自分のために生き生きと輝きたいと思う。そして、この文章を読んで下さっている人すべてにそうしてもらいたい。これは中島みゆきのメッセージでもあると思う。 

注1 ありのままの自分を受け入れること。「こうあるべきである」と決めて、そうでない自分をダメだと思ったりしない。誰にでもいいところと悪いところがある。できることとできないことがある。そのすべてが自分であると受け入れる。


注2 グループで行う参加体験型の学習。フェミニスト・カウンセリングの場面では、自分に気づくためのワークショップが多い。テーマにそって作業や課題をしたり、ゲームのようなことをしたりと、様々なメニューがある。メニューをした後に振り返りと言って、一連の作業などをして自分で気づいたことを、必ずグループで話し合う。